住宅の温熱性能への関心が高まっています。
室内の温度を適切にコントロール出来るよう、住宅の構造に適切な断熱措置をすることで、夏は涼しく冬は暖かい生活を実現。
それだけではなく、省エネルギー化が実現し、光熱費の削減や温室効果ガスの発生抑制など環境にも配慮した住宅となります。
日本住宅性能評価基準は、2022年10月にそれまで4だった断熱最高等級を7まで引き上げるように改正されました。
今後注文住宅を検討する際、温熱性能の程度もますます大きな検討項目の一つになっていくことでしょう。
今回は、2019年に地元工務店で注文住宅を建てた方にお話を伺いました。
居住地域は地域区分第四地域に該当する寒冷地。
”暖かい家”を目指し、高気密高断熱住宅を得意としている地元工務店を建築先に選ばれています。
基本情報は以下の通りです。
建築先 | 地元工務店 |
完成年月 | 2019年 |
居住地域 | 地域区分4 |
建物詳細 | ・断熱等級6 (建築当時は最高等級の4に該当) ・建坪:50坪 ・総2階の部分共有型二世帯住宅 ・オール電化 (空調はエアコンのみ) |
家族構成 | 6人家族 ・親世帯:夫婦2人 ・子世帯:夫婦2人+子ども2人 |
その他 |
新築後4年が経過し、高気密高断熱住宅に実際住んで感じるメリットデメリットをお話しいただきました。
高気密高断熱住宅を検討している方も、高気密高断熱住宅自体がよくわからない方にも参考になるお話です。
ぜひご覧ください。
高気密高断熱住宅のメリット
まずは、メリット。
メリットとしては以下を挙げていただきました。
- 冬はエアコンだけで暖かい
- 光熱費が安くなる
- 灯油を入れに行かなくて済む
- 洗濯物が乾きやすい
それぞれについて、詳しくお話を聞いていきます。
冬はエアコンだけで暖かい
私の居住地域は、最低気温で-10°近くまで気温が下がり、多雪地域でもあります。
建て替え前の家ではエアコン、ガスストーブを使用していましたが、それでも家の中は寒く感じました。
高気密高断熱住宅で初めて過ごす冬はまず、玄関先の暖かさにびっくり。
エアコン暖房だけで十分に家じゅうが暖かく、感動しきりです。
家にお客さんを招けば「お家、暖かいね!」と言われることもあります。
・家の隙間が少なく室温が外に逃げにくい
・断熱材により家が保温され、外気の影響を受けにくい
という特徴の高気密高断熱の家の恩恵を実感しました。
エアコンの設定温度はどのくらいにしているんでしょうか?
冬場は20~22℃でしょうか。
日中は誰もいないので20℃設定、夜は寒ければ22℃まで上げています。
寒冷地でもその程度の設定温度で室温が保たれるのは凄いことですね!
光熱費が安くなる
気密性、断熱性能が高いことで
・家の外の暑さ/寒さをブロック
・家の中の冷やした/暖めた空気が外に逃げにくい
ため、エアコンの稼働を抑えても部屋の中の温度が一定に。
空調をエアコンのみで運用できていることから、灯油代、ガス代などがかからず、その分光熱費を下げられています。
実際に建て替え前と比較すると、灯油もガスも使わなくなり、トータル半分ほどの光熱費に下がりました。
ただし、家を建てた時と比べると電力が高騰し、電気代はかなり家計に響くようになっています。
それでも灯油代もガス代も高騰しているだけに、高気密高断熱の省エネ仕様にしてあることに満足しています。
光熱費は何十年も家計に影響し続けるもの。
抑えられるような工夫をしておくことは大切です。
灯油を入れにいかなくて済む
建て替え前の家では、エアコンだけでは寒いため石油ストーブも使用。
灯油が切れれば外にある倉庫に入れにいき、寒い中満タンになるまで待つという生活。
・手が灯油臭くなる
・灯油を補充している間はストーブが止まってしまうため部屋の中が寒くなる
・ストーブに灯油を補充しても、灯油が行き渡るまで待たなければいけない
などというストレスがなくなりました。
灯油をガソリンスタンドまで買いに行った際、車にちょっとこぼれて臭いが残る、なんてこともなくなりました。
灯油を切らさずに買っておくのは本当に大変。
寒冷地では使用量も多くなり、なおさらです。
そのストレスがなくなったのは大きいですよね
洗濯物が乾きやすい
冬場は空気が乾燥しやすく、室温が一定なので、洗濯物が乾きやすいです。
薄手のシャツなら半日で乾いてしまいます。タオルもパリパリに。
パーカーなどの厚めの衣類も、なるべく広げ、他の衣類との間隔を開けるなどの工夫をするとより乾く時間が短縮されます。
冬場以外はどうですか?
共働きなので基本は洗濯乾燥機を使用しています。
室内干しも出来るようにサンルームを作ってありますが、雨季や夏場は湿気が多くなりがちなので乾きにくいです。
こういった時期は、除湿機を使用して室内干ししています。
それに関しては、特に他と変わらないようですね
高気密高断熱住宅のデメリット
続いては、デメリット。
- 熱がこもりやすい
- 乾燥しやすい
- 石油ストーブが使えない
- 建築費用が高い
これらの点を挙げてくれました。
こちらも、1つずつ詳しく解説していただきました。
熱がこもりやすい
高気密高断熱住宅は、外に空気を逃がしにくい構造になっているため熱が家の中に滞留します。
冬は暖かくて良いですが、夏は暑くなりやすいです。
エアコンで部屋の温度は下がるものの、湿度は下がらないのでモワっとした空気により暑さを感じます。
私が建てた工務店の施主アンケートで、夏場の暑さが不快という意見がちらほらと見られました。
何か快適に過ごすための工夫をしていますか?
湿度の対策で、除湿器を使用しています。
あとは扇風機をエアコンと併用し、冷房を各部屋に行き渡らせるようにしています。
夏には熱が室内にこもりやすいのは盲点!
対策は必須のようです。
乾燥しやすい
冬場に乾燥しやすいのはデメリットです。
冬は気温が下がり、空気が乾燥します。
建て替え前の家では石油ストーブなどの燃焼系の暖房を使用していたため、石油燃焼時に出る水蒸気により室内の乾燥は抑えられていたかもしれません。
エアコンは空気を暖めるだけで水蒸気を出さないため、エアコン暖房のみではかなり乾燥するなと感じます。
加湿器がないと、唇や喉が乾きやすいです。
子どもが気管支が弱いので、乾燥が酷いと体調を崩すこともあります。
私自身もそれまで手荒れなどほぼしたことがありませんでしたが、新居に住み始めてから手がカサカサに荒れ放題です。
ハンドクリームが手放せなくなりました。
乾燥は風邪やインフルエンザの原因にもなります。
気を付けておきたいです!
石油ストーブが使えない
石油ストーブはエアコン暖房に比べると即暖性が高く部屋がすぐ暖まるのが特徴です。
以前の家ではエアコンの暖房だけでは室内が暖まりにくかったため、必須でした。
高気密高断熱住宅は、気密性を高める=家の隙間面積を減らして室内の空気を外に逃がさないようにし、24時間の計画換気で家じゅうの空気を入れ替えるシステムになっています。
厳密には石油ストーブが使えないわけではありませんが、相性は悪いと言われます。
理由は、計画換気では石油ストーブで排出される二酸化炭素などの換気までは設計されていないから。
室内の空気が外に逃げる隙間が少ないため、1時間に1回は窓を開けて換気しなければ、最悪の場合二酸化炭素中毒を引き起こす可能性も。
運用する際は十分気を付けなければなりません。
エアコン暖房のみで事足りるようならば、石油ストーブが使えないことはあまりデメリットにならないかもしれません。
一方で、石油ストーブの即暖性に魅力を感じる人には知っておいて欲しいポイントです。
建築費用が高い
・外断熱、内断熱
・UA値0.36以下、C値0.5以下
というのが標準仕様だった工務店で家を新築しましたが、2019年当時で土地は別で3000万円以上の住宅ローンを組んでおり、決して安いとは言えません。
その後、消費増税や建築資材の高騰により価格は更に上昇。
担当の営業からは私が家を建てたときに比べ、坪10~15万円以上(50坪の家を建てたため500~750万円に相当)価格が上がっていると聞いています。
気密断熱性能を上げるためにそれなりの施工が必要になるため、どうしても費用がかさむようです。
これが一番のデメリットかもしれません
総評:デメリットもあるけれど、高気密高断熱住宅は快適でおすすめ
寒波のさ中、リビングのエアコンが壊れてしまい、1週間ほどリビングエアコン無しの生活になったことがありました。
脱衣所で使っている小さな電気ストーブをつけ、寒ければ着こむという生活を強いられましたが、暖房をつけていなくてもリビングの室温は16℃以下に下がることはありませんでした。
外は寒くても、家に帰れば凄く暖かい。
改めて断熱性能の重要性を実感しました。
買い替えたエアコンの取り付けに来た業者さんは「暖房ついてないのに、家の中暖かいですね」と驚いていましたね。
高気密高断熱住宅にはデメリットももちろんありますが、暮らし方を工夫することで克服できることも多いと感じます。
個人的には、快適な暮らしを考えるのであれば高気密高断熱の仕様にこだわり、断熱等級5,6を目指すことをおすすめしたいです。
今回教えていただいたメリットデメリット以外に気になるのは、施工会社の選び方。
どうやって探すのが良いのでしょうか?
私の居住地は寒冷地なので、高気密高断熱の施工をする地域密着の会社は比較的多く探しやすかったです。
地域に限らずHPや実際に気になった会社の見学に行き、どのような家を建てているのかをみることで家の雰囲気や得意な施工などがわかると思います。
おわりに
高気密高断熱住宅を建てて4年間住んでみた感想を伺いました。
- 冬はエアコンだけで暖かい
- 光熱費が安くなる
- 洗濯物が乾きやすい
といったメリットがある一方、
- 熱がこもりやすい
- 乾燥しやすい
- 建築費用が高い
といったデメリットを感じられているそうです。
物事には必ずメリットデメリット両面が存在するもの。
「デメリットは暮らし方で何とかなる!」という力強い言葉もありました。
日々の暮らしの中で十分にメリットを感じられ、満足度の高い高気密高断熱住宅。
家づくりの際の検討項目の1つとして、温熱性能についてもぜひ考えてみてください。